* 掌のひかり【第8話】 *


 三池が合澤の部屋を常宿にしていることは、そう日もかからず友人たちに知れ渡った。別に隠していたわけではないから、一人に知られれば公になるのもあっという間だった。
 三池、おまえマジで合澤に甘えすぎだろ。
 案の定、友人たちにそう非難された。同時に一緒にいた合澤も、三池を甘やかしすぎだ、三池に言いくるめられているのではないか、と、さまざまな意見が雑談の一環で投げかけられた。非難を一手に受けた三池は、確かに合澤の真意を都合いいように解釈していたのかもしれない、と一瞬心を揺らしたわけだが、合澤本人はあまり気にしていない素振りだ。逆に、三池は気遣わなくてそのままでいいから、と、合澤にフォローされる始末だ。
 その合澤は、友人間で賞賛されるようになっていた。同じく一人暮らしをする沼田いわく、部屋にこんなうざい三池がいても気持ちが流されず、淡々とプライベートを守れるスキルがあるのはすごい、ということらしい。三池は見事な邪魔者扱いに少し眉を寄せながらも、彼らの発言から合澤と自分の共同生活を振り返ってみた。
 確かに、合澤は淡々としている。テレビがついていても無視して課題をしているし、三池にかまわず風呂に入ったり眠っていたり出かけていたりしている。ただ、家事全般を面倒だと思っていないらしく、三池の分もついでにしてくれることが多い。料理をするときは三池の気に入ったレシピを絶対採用するし、朝はかならず温かいものを飲まないと身体が本調子にならないことも知って用意してくれるし、……要は彼らが考えている以上に、合澤は三池のわがままに付き合ってくれている。
 言われて振り返った合澤との生活は、それこそ友人たちの非難を増幅させるだけの内容だった。甘やかされていると言われても仕方がない。でも、合澤が進んでやってくれるのだ。嬉しくて頼ってしまう。
 三池は実情を話すだけドツボにはまるとわかって、友人たちに反論はしなかった。まして、合鍵まで持っていることは口が裂けても言えなかった。ここで彼らに知られれば、完全に引かれ糾弾されるだろう。三池はこの場面で黙ることに徹した。
 同席していた合澤も、友人たちの見解に少し戸惑った様子だったが、世話好きなのは昔からやかましい弟妹がいたせいかも、という自己分析を述べていた。両親が商売をしているせいで、必然的に家事のできる気遣い屋になっていったのかもしれない。合澤が家族の話を表立ってするのは珍しいことで、三池のふくめ集まっていた友人たちは合澤晴巳の性格が成り立った経緯に納得した。
 ただ三池だけは、父親の入院に対して合澤がひどく懊悩する要因を改めて知り、薄れはじめていた不安を一気に取り戻した。合澤の家が自営業だと知らなかったのだ。
 父親の大病がわかったとき、長男の合澤が退学を考えたのは、無理のないことだと三池は思った。家業を引き継ぐ必要があるのだろう。合澤からそうした話をこれまで訊いてこなかった自分の無頓着さも、今更ながら不思議に感じた。なぜこれまでそうした点に興味を抱かなかったのだろう。
 今はナイーヴな話でも、彼のことを知っておきたかった。後日二人きりになった合澤の部屋で、久しぶりに彼の父親の状態を訊いた。合澤は躊躇うことなく答えてくれた。小康状態ということだった。
 合澤の様子を四六時中見ても、それに嘘はないと思う。ついでに自営業だと知らなかった点を踏まえて、家業を継ぐのかを尋ねた。意外にも、それは絶対にないとのことだった。
 彼の話し振りに動揺はない。合澤の精神面はかなり落ち着いているようにも見えた。しかし、考えごとをしているときの表情は相変わらず暗い影を落としている。彼に付きまとう憂いを知る三池も、妙な具合で沈黙しているときは声をかけないようにしていた。そっとしておいても、彼は自分から動き出す人間なのだ。そして、人がそばにいる安心を手繰り寄せるように、三池へ声をかける。三池も彼の笑顔が見たくて、雑談を持ちかけたり簡単な要求を投げかけたりする。自分の前で、合澤が素直になってくれると不思議に満たされた。
「三池、寒くない?」
 一段上から聞こえてきた声に、三池は閉じていた目を開けた。
 部屋を暗くして五分も経っていない。空気はすでに冷えきっている。軽く暖房をかけていた名残はない。とうとう師走目前という頃合だ。先々週にあった学祭も、合澤と同様アルバイトで潰していた。これから冬期休暇を前にレポート重視の講義は大詰めとなり、レポート提出準備に追われていく。三池の好きではない寒い季節の本格的な到来だ。
 特に今夜は寒波が来ているせいか、日が暮れて一気に寒くなった。アルバイトからそれぞれ帰宅すると、すぐさまこたつの下に電気カーペットを敷いた。現状の寒さならば、エアコン、こたつ、電気カーペットでしのいでいけるが、合澤は三池の寒さ嫌いをまだ気にしているのだろう。
 三池はベッドのほうへ寝返りを打った。そして、いや、と否定した。
「下のつけっぱなしにしてっから、俺んところはあったけーよ」
 三池の寝床は、電気カーペットのタイマーをかけた上に敷布団を置いている。はっきり言って、自宅のベッドで寝るより暖かかった。それも付け加えて言えば、もぞもぞと合澤の蒲団が動く。視線を上げれば、ベッドの端から彼の顔が見えた。目が暗闇に慣れてきたようだ。
「そんなに、そっちってあったかい?」
「おまえは寒いのかよ」
「うーん……つま先は冷えてる。そっち地べただから、ここより寒いと思ったんだけど。寒いの苦手だろ、三池は」
 足先が冷えていると言いながら、床が寒かったら寝場所を交換しようと提案する。支離滅裂な気遣いに、また余計なことを考えている、と、三池は思った。
 いつも思うところだが、合澤は変なところで気にしすぎだ。
「いいよ別に。どっちかっつったら、今はおまえが寒いんじゃねえの? 足が冷てえなら」
 そう言ってみたものの、三池自身も電気カーペットから離れたくはない。だからといって、家主の合澤が寒い思いをするのもおかしな話だ。
 しかも、冬ははじまったばかりである。三池は、合澤に去年はどうやって越冬したのか尋ねたくなった。もしかしたらこの家にあるコタツを寝床にしていたのか。この部屋にはエアコンがついているが、光熱費の高さを考えてしまうのか合澤はあまりつけたがらない。
 やはり、渡している額を暖房費分少し上げるか。
 そうすれば気兼ねなくエアコンもつけ放題で快適な冬を送れる。三池は入ってきたばかりのアルバイト代に、金銭的な余裕を持っていた。
「三池」
「ん?」
 上から降る声に反応する。エアコンをタイマーでかけるとか、そのほかの妙案でも見つけたのか。そう思ったが、彼はその先にある台詞を続けなかった。
「合澤? 呼んだ?」
 訊きなおせば、うん、という返答がすぐに聞こえた。
「……あのさ」
「なんだよ」
 もったいぶらずに言えよ。そう言うつもりで口を開く。先に合澤の声がした。
「そっち、さ、……行っていい?」
 躊躇いに継ぎ足された言葉は、三池を少し驚かせた。合澤からは想像していなかった発言だ。
 だが、すぐに平静を取り戻す。確かに妙案だった。三池は抵抗感なく、軽い気持ちで答えた。
「ああ、いいぜ」
 了承したのに、ベッドから見下ろしている頭は動かない。視界不良の夜の中で見つめあった。
「来るなら早く来いって」
 表情があまり読み取れないから、三池は急かすように言った。
 ようやく合澤の蒲団が動く。降りた素足を目にすると、三池は歓迎するように掛け蒲団を開いた。静かに合澤の身体が三池の隣へ滑り込む。
「うお、寒ッ!」
「あ、ごめん、冷たい?」
「いや、今蒲団開けてっから。なんだ、思ったよりおまえ、身体冷えてねーじゃん」
 合澤の体温を確認するように動くと、彼の戸惑った声がすぐそばで聞こえる。 
「う、うん。でも、つま先は」
 寝具代わりのスウェットがすれる。足先の冷たさを確認するように、三池は無意識に脚を軽く絡ませた。
「待っ、三池!」
「足はマジ冷てえな。隙間できると寒いから、合澤もっと寄れって」
 引き寄せる力が強引だったせいか、合澤は三池の長袖をつかんだ。
「待って、したら上の蒲団も使って」
 二枚重ねにすれば、隙間もなくなるということだろう。しかし、三池としてはすでにおさまりがいいかたちになっていた。人肌があれば一枚蒲団の中でも温かいし、合澤ならば身を寄せ合ってひとつの蒲団を共有しても疎ましくはない。
 腕を彼の胴に回して思う。合澤は前より華奢になったかもしれない。身長が同じくらいなのに、抱き寄せても圧迫感がない。シャンプーのやさしい香りがして、三池は頬を緩ませた。
「いいだろ、これで。合澤もそんな寝相悪くないだろ。俺もそこまで悪くねーし」
 軽い口調で言ったのが良くなかったのか、返答が一向にやってこなかった。良いか悪いか、寝られるかどうかくらい答えてほしい。
 三池はすぐそばで目を伏せる合澤を見る。暗闇だけれど、間近で顔の輪郭がよく見えた。頬は冷たいかもしれない。そう思ってそっと触った。小さく肩が揺れて、合澤はくちびるを噛む。
 まるで、息を潜めているようにも見えた。人と密着して寝るのには、どうにも抵抗があるのか。
 三池は歳の離れた妹がいるせいで、寝床の中に人がいる状況は慣れていた。幼い頃の妹は、深夜になると勝手に兄のベッドへ侵入する癖があったのだ。当時は小学校低学年のかわいい妹だったから怒りもしなかったが、……朝勃ちしていないか、といった男の生理現象だけは、さすがに少し気にしていた。
 合澤にも弟妹がいるというが、こうした習慣はなかったのだろうか。むしろ、こういったことは苦手なのかもしれない。……でも、そうであれば三池の蒲団に入りたいと言わないだろう。
 枕がないと寝られないタイプなのか、もしくは思ったより暑くて出たいとか? と、見当違いのことを三池は思いながら、もう一度彼の耳許で呼んだ。
「合澤、寝てる?」
 そばの頭が小さく首を振る。
「まだ寒いかよ?」
 また、彼の首が横に揺れた。しかし、首以下がまったく動いていない。このままの体勢で潜めるようにして寝られるものなのか。
 ……そう思って、ある変化に気がついた。
「合澤」
 どう言おうか考えたが、簡潔な言葉しか見つからない。三池も少し緊張しながらささやいた。
「勃ってる」
「……知ってる」
 くぐもった声を聞いて、妙に三池のテンションが上がった。
 同時にいたずら心も芽生える。合澤の脚の間に差し込んでいる自分の片脚で、そのあたりを擦る。密着する身体がわずかに震えた。感じたのだろう。
「ここでやってもいいぜ」
 半分冗談混じりにささやきを重ねる。男が勃起するのは当然の話だ。でも、合澤のこうした露骨な現象にであったのははじめてだった。
 よくよく考えて見ると、合澤の部屋にアダルト雑誌は見当たらない。自慰をした形跡もない。ただ、性交渉の経験は男女両方あると知っている。三池の胸の内で興味が芽生えた。
 なにかしらの言葉を待っていたが、それより先に合澤の手が動いた。そして細い身体も動く。潜めていた息がわずかに変わった。
 彼が、三池の言葉を真に受けたことは明白だった。
 同じ蒲団の中で密着して、静かに自慰行為をはじめる。三池には合澤の動作が手に取るようにわかった。異様な高揚感が身体中に湧き上がる。彼が両手を下肢に使って、より快楽を引き出そうと身を曲げる。三池はそれを阻止するように合澤の腰をつかんだ。
「ッ、あ」
 鼻にかかるような甘い彼の声に、心臓が跳ねた。抵抗するのかと思えば、逆に合澤は体温を求めるようにくっついてくる。その反応につられ、そっと彼の寝具をのけて素肌に触れた。薄い腰と尻をゆっくり撫でる。ビクッ、と感じた皮膚へ指をさらにスライドさせた。彼をもっと引き寄せ、自分の身体に密着させる。合澤の指が硬いものを擦っている。
 三池はたまらず、息を荒げる彼の性器に触れた。合澤の手をどかして、かたちを確かめる。彼の性器は濡れていた。興味深く上下に擦って、先端をぐりぐりと押す。
「んッ、みい、や、……あッ」
 合澤が三池の服を強く握り締めた。人から与えられる快楽に逃げようとしているのか欲しているのかわからない。ただ彼の固く張り詰めたものは達したいと訴えていた。三池は腰を固定させたまま、合澤の小さな抵抗を制して何度も刺激を与える。
「ん、んッ、あ、でちゃッ……ッ」
「いいよ、だせよ、」
 言葉でも促して、三池の手の中で射精させた。手は合澤の精液でベタベタになった。その妙な満足感とともに近間にあったティッシュへ乾いた手を伸ばす。三池の身体をつかんで、荒く呼吸する彼のか細い声が聞こえた。
「……ほんと、ごめん」
「別に謝んなよ。男なら勃つのが普通だろ」
 手を拭いたティッシュをてきとうに投げる。ベッドへ戻るつもりかもしれない彼を阻止するべく、素早く胴に腕を回した。合澤の首許から、シャンプーの香りだけでなくわずかな汗のにおいが混じる。
 三池の性器も反応していた。
 むしろ、反応しないほうがおかしい。それくらい合澤の自慰にグッとくるものがあった。喘ぐ声をもっと聞いてみたいと思った。
「あの、三池のも、するから」
 律儀な宣言とともに、合澤が服越しの三池に触れた。了承する間もなく、指で性器のかたちを確かめられる。ノーと言えるわけがなかった。
 三池は息を詰めて、彼の動きに神経を集める。躊躇いなく合澤の手が下着の中に入り、三池の竿を撫でてきた。触り方は女と違って的を射ている。異性とは指の動きが違うのだ。強く上下に性器を弄られて感度が増した。
「……気持ち、わるくない?」
 手淫を続けながら、不安げに訊いてくる合澤が少し不思議だった。人の手でしごかれて気持ち悪いはずがない。
「ん、なんで。気持ち、いいよ」
 手持ち無沙汰に、合澤の髪を撫でる。そして健気に手を動かす彼の吐息を拾った。そして首から肩、背へと彼の熱を辿る。指の動きに合澤は肌と息をざわめかせる。そこに籠もる欲を再確認した。彼のへその付近を撫で回す。
「……ふ、……ッ、」
 三池の性器を勃起させながら感じる合澤のビクビクした部分に直接触れたくなって、もう一度、彼の服の中に手を突っ込んだ。性器の根元に指があたり、そこをしつこくまさぐる。少し芯を持っていた性器がまた勃ち上がっていく。
「合澤」
「……ん、……んッ、」
 もてあそばれながら、彼は三池の性器に集中していた。しかし、自己の快楽が強いのだろう。
「また勃ってる。おまえ、たまってる?」
 そう指摘して強く擦れば、また大きくなる。
「あッ! ……ッ、う、ん」
 指を動かして、合澤は素直に肯定した。もっと触られたいように腰が動く。
「ッ、あ、……み、いけ、みいけ、」
 名前を呼びはじめた、その甘い声に三池はたまらず身を起こした。驚いたのか静止した合澤の手首をつかんで押し付ける。
 簡単に手淫で射精したくなかった。合澤を敷き蒲団に強く縫いとめて乗り上げる。そして、彼の平たい胸に服の上から手を置いた。
 合澤は唐突な体勢の変化に驚かなかった。けれど、胸元をなぞれば心臓の鼓動が伝わる。彼の真っ直ぐな視線を意識しながら、邪魔な服を捲り上げた。男の肌に指をさまよわせて突起を見つける。クリクリと引っかくように押せば、合澤の身体が跳ねた。
「ン、……ッ、あ、」
 乳首には、すでに勃っているような弾力があった。両方の乳首を何度も押しつぶして確かめる。近間にあった合澤の大きな目が細められ、くちびるが開いた。感じている露な表情だった。
 もっと反応が見たくて、三池は胸元にくちびるを寄せた。舌で感度を探る。滑らかな肌だ。
 三池は自分が男の身体でも欲情できると悟った。乳首を舌でつつき、痕をつけるように吸う。大きく胸を動いた。
「ふ、……あ、ッ、んッ」
 執拗に舐めて噛んで吸えば、合澤は声を洩らす。潤みはじめた大きな瞳は、三池の動きをじっと見つめていた。三池のやりたいようにさせるつもりなのか。乳首から鎖骨へ舌先を這わす。
「う、……んっ」
 薄い皮膚の反応と滑らかさがたまらなくいい。いつまでも舐められると思った。後先考えず愛撫を続けていると、みいけ、と呼ばれる。顔を上げた。
 合澤は、自分の身体に置かれた三池の手をそっとつかんで、顔のほうへ引き寄せる。三池はそれを見ていた。中指にくちびるが当たる。彼はそれ開いて舌をだした。舐められる。
 三池は驚いて彼の目を見た。潤んだ瞳は三池だけを見ていた。飴玉をしゃぶるように動いている。誘うような仕草だった。三池の体内へ完全に火をつける行為だ。居ても居られなくなった。
 合澤がとうに男とセックスできる人間だと知っている。だから、簡単に欲望が生まれるのだ。三池は挿れたくてたまらなくなった。指を舐めさせながら、彼の性器を撫でて、その下を探る。意図を知らせて訊いた。
「なあ、なにが必要?」
「……オイルとか、でも、なくても、いいよ」
 消え入るほど小さな声で返され、三池は掛け蒲団を剥ぐと即立ち上がった。したいことは決まっているが、合澤を傷つけたくはない。彼がオイルと言うからには、油でもいいはずなのだ。一瞬だけキッチンの電灯をつけて、三池は油のような色の瓶を一本つかむ。ラベルは英字だが、オリーヴの単語を見つけて光を落とした。蒲団の側に置いて手早く全裸になり、仰向けになったまま動いていない合澤の上へ戻る。
 蒲団を押しのけ、彼の股の間に身を挟ませた。合澤の下肢に布はない。三池が潤滑オイルを探す間に、彼もまた服を脱いだのだろう。勃起する性器とともに、三池を欲しがる意思表示と受け取る。ぶわっと高揚感が増した。
 早く、早く彼に埋め込んでしまいたい。
 瓶の蓋を取って中身を片手に垂らす。片膝の裏に手を差し入れて広げると、合澤も三池のやりやすいかたちに動いてくれた。受け入れ口を探して、ぬめつく指を一本挿れる。怯えたように締まった中が、少しずつ拓いていく。
 合澤の呼吸の仕方がまた少し変わった。弛緩するように努めているのだ。三池の指を奥まで柔軟に飲み込んで、緩く締まる。合澤の中は狭くて熱をはらんでいた。
「ぅん、あッ、……ん、ッ」
 内壁をこするように、クイッと指を回せば合澤の腰が揺れた。アナルだけでもイケそうな反応に、三池はたまらず指の本数を増やす。性器を撫でながら出し入れすると、刺激が深くなるのか、蒲団をつかんで背をそらした。
「みい、……あ、ッあ、」
 快楽をつくりながら、悶える彼の様子を見る。はじめて見る姿と喘ぎ声にドキドキする。もっとなにかしてやりたくなる。合澤がつくる艶やかさに魅了されていた。嬌声を我慢しないところにも興奮した。
 まるで彼は、男の悦ばせ方を知っているかのようだ。……おそらく知っているのだろう、という結論はこの際なかったことにした。
「も、いい、いい、みい、け、」
 合澤の片脚が絡む。欲しいものを訴えられ、促されるまま三池は彼の内部に欲望を挿入した。
「は……ぁ、ッ……あッ……あッ」
 全身をヒクヒクさせながら、三池を食んでいく合澤の肉体は淫らでかわいかった。喘ぐ声を引き出すように慎重に挿れながら、上体を少し上げて合澤の顔を見る。汗を浮き立たせた額の下で、涙がこぼれていた。理性で動きを留めた。
「わるい、痛い?」
 体液にまみれた手で、彼の頬を撫でる。薄く目蓋が開き、首はかすかに横へ揺れる。胸で息をする合澤の中が、意図的に締まった気がした。猫のように合澤が三池の指へ擦り寄る。濡れたくちびるの輪郭をなぞると舌が当たる。彼は男の指を舐めながら、上の乗る三池を見る。甘えるような仕草だ。それは、普段の彼からは想像がつかないほどエロかった。
 いつもそばにいるというのに、合澤がこれほどいやらしい男だと思いもしていなかった。潤んだ目で自分の性器を咥え、息を洩らしながらおいしそうに腰を揺らす。そのギャップに感情がはちきれ、下肢の途中まで埋めていたものを全部勢いよく奥へ押し込んだ。すぐ射精しないよう祈りながら、三池は中の気持ちよさに引いては押した。
「あ、ッ、……んッ、……ふ、あ、あッ、あッ」
 合澤が三池にあわせて物欲しげに動く。
「みい、イッ、あ、あッッ!」
 快楽を一杯にくわえた彼の嬉しそうな顔が、たまらなかった。勢いのまま、中に出しきるまで律動した。
「や、あ、あ、ぅん……ッ、んッ!」
 熱い衝撃に仰け反ろうとする彼の身体をつかみ、強く押して一滴残らず精液を流し込む。合澤の身体は健気に三池の欲望を受け止めた。
「は、あ、……あ、……は、」
 室内に荒い呼吸が響く。怒涛のようなセックスの跡を指で辿る。組み敷いた肌は、快楽の余韻にピクピクと震えていた。性器に触れれば、挿れている間にイッたようだ。
 喉を鳴らす彼を見る。涙と汗で濡れた合澤が、三池を視界におさめていた。目があうと、彼はなにも言わず微笑んだ。三池の鼓動が強く鳴る。
 ……罪悪感はない、といえば嘘になる。
 それでも、合澤とセックスして込み上げるものがあった。
 熱のある頬に触れる。薄暗闇の中でも、紅潮しているとわかる。本当に、どうしようもなくかわいいと思う。合澤が、かわいくてたまらない。
 自分の身体の下で幸せそうな顔をする。こんな甘い表情の合澤を見たのははじめてだ。セックスの中で見せた彼の表情はどれも愛らしかった。
 もっと、もっと見てみたい。三池は、また彼の熱を求め指で身体をなぞると、合澤は三池の気持ちを受け止めるように目を閉じる。
「ん、……三池」
 彼のくちびるが、自分の名前をかたどった。
 ああ、やばい。好きだ。
 合澤が好きだ。
 すっげえ、好きだ。
 彼の肌にまた舌を這わしながら、三池は自覚した。好きでたまらない。好きで、どうすればいいのかわからない。
 怒涛にやってきた感情の赴くまま、目の前にある甘い身体へ没頭していった。合澤は最後までそれを許してくれた。




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