* モアザンパラダイス【第4話】 *


 南国らしい晴れやかな日差しが燦々と室内を照らしていた。
 目を覚まして空を見れば、澄み切った蒼色。カーテンは開かれているものの、人の気配はない。
 ……もう、行っちゃったのかな。
 ごろり、寝返りを打って隣のベッドを確認する。くしゃくしゃになったシーツ。隆章ならば、ピンッときれいに整えているはずだ。
 ……だから、やめよう。比較するの。
 泣きそうになる想いを閉じ込めるべく、真幸は両手で自分の頬をペチッと叩いた。
 上間宏和は、たまたま困っていたところを泊めただけの相手だ。隆章と比較するためでもないし、恋人代わりをするための男ではない。
 ……最低なことは、やめよう。
 ベッドで寝ていてもろくなことを考えないのは、昨日で立証済だった。隆章のことは、東京に戻ってから真剣に本人と話しあうしかない。今は沖縄だ。東京とはかけ離れた南の島だ。
 ……宏和さんの話、面白かったな。
 悪い記憶から逃れようと、昨夜のことを思い出しながら身体を起こした。宏和に「さん付けはくすぐったいから止めてよ」と言われていたが、二歳年上だと聞かされてから呼び捨ては気が引けている。しかも、彼は真幸の知らないこの地を知り尽くした沖縄人だ。妙な憧れも持ちはじめてしまっている。
 昨夜、彼は自身のこととこの島のことを話してくれた。
 宏和は本土に渡ってから毎年沖縄を訪れているそうだ。大学までは夏休みのほとんどをこの島で送っていたそうだが、設計技師になってからは五日前後の夏期休暇を利用して訪れるという。もっとも、一番休みが取れるゴールデンウィークはホテルも高くて予約が取れないから行かないと言っていた。そのせいでハーリーという大好きな伝統行事が見れていないらしい。豊漁や安全を願って行なわれる海の競漕、ハーリーは、男の中の男の祭ですごく盛り上がるし見ごたえがあると教えてもらった。
 その他にも、エイサーはこの時期からはじまる盆踊りのような伝統芸能、ウークイは旧盆に行なわれる先祖を送る大切な行事だと話してくれた。先祖を見送るときはたくさんのお供え物を用意して、うちかびというお金に模した紙を燃やすという。
 「ウートートー、って手を合わすんだぜ」と、沖縄式の作法を説明してくれた彼は、朝から祖父母の墓参りへ行って、親戚と昼ごはんを共にする予定だそうだ。
 ……なんだか、宏和さんすごく楽しそうでいいな。
 彼の話を聞いていると、ここはまるで異国だ。文化も祭典も本土とはまったく違う。従弟がハブに噛まれて大変だった話や、親戚の家で飼う熱帯魚を釣りに行った話、古い家には一家にひとつサンシンという楽器があって、飲み会のときには歌って踊るという話。
 宏和にとって、今回も親戚たちと過ごすための里帰りみたいなものだろう。単に旅行に来た真幸とは目的が違う。
 ……おれも、レンタカーを借りて、観光めぐりとかしたほうがいいのかな。
 「沖縄は面白いところがいっぱいあるよ」と、おすすめの観光スポットを丁寧に教えてくれたときは、明日絶対に行こうと思えた。
 ……でも、今はそんな気になれない。独りで行っても虚しいだけだ。もともとは隆章と行く予定だったんだから、余計に一人で行くのは嫌だ。
 息をついてテレビをつける。音を最小にして時刻を確認すると、午後二時半。十二時間以上寝ていた自分の怠惰な生活にも、嫌気が差してきた。自宅にいるときは、休日でも昼には起きて活動している。でも、沖縄に来てから何もかものやる気を失っていて、気を抜くと泣いてしまいそうになる。
 ……こんな調子で、日常生活に戻れるのかな。
 宏和に上げてもらったテンションが、独りきりに戻ってすっかり鬱鬱しいものに戻っていた。昨日散々泣いたせいで、瞼は重く、目もシパシパしている。あんなに泣いたのに、涙腺にはつくりかけの涙がたくさん留まっているようだ。
 ……あのひと、おれの様子がおかしかったの気づいてたよな、たぶん。
 談笑している間、彼は一度も真幸の沖縄旅行の理由や東京での生活を尋ねなかった。真幸の泣き跡に気づいていたのだろう。「なんで一人なの?」という問いに、顔を引きつらせたこともしっかり見られている。
 ……目と瞼、宏和さんが戻ってくるまでに普通になってほしい。目薬つけたら早いかな。
 自分のキャリーバッグのところに行くと、その横に彼のバッグも置かれていた。
 宏和の楽しい話を聞いた後、『一泊じゃなくて、二泊させてもらえませんか』と、改めてお願いされた。真幸は快く、『帰る日まで居てもいいですよ』と答えた。
 同時に、彼が真幸より一日早く帰京することも聞いた。最後の日はまた独りになる。とても寂しく感じてしまったけれど、泣くのは堪えた。宏和に引かれたくなかったし、そもそも二泊以上してくれるかもわからない。彼は気さくだが、昨日出逢ったばかりのひとなのだ。
 ……おれ、本当に心が弱ってる。会って、一日も経ってないひとに寄りかかろうとして、男らしくない。しっかりしろ、自分。
 客観的に諭しても、感情はなかなか追いついてこない。暗い気分を拭えないまま、バッグから目薬と着替えを取り出す。視線を上げると、ガラスのテーブルに何かが置かれていた。
 メモ用紙に、飴玉の小袋が三つ添えられている。文字の筆跡は宏和のものだと知れる。
 ……けっこう、字、綺麗なんだ。
 興味をもって手に取った。ギャップにちょっとびっくりする。
『真幸へ。昨日はありがとう。俺は先にでかけます。ドアノブにプレートをかけて、勝手にベッドメイキングしないようにしているから、部屋を掃除させるときは、プレートを反対にしてかけてください。すぐしてくれるはず。何時になるかわからないけど、夜には戻ります。勝手に入っていたらごめんね。宏和』
 少年っぽい快活さを見せる彼だが、少し女性的な字だ。隆章のほうが男性的な字を書いていた。
 ……またおれ、比較してる。でも、比べれば比べるほど、似つかないんだよなあ。
 罪悪感を蓄積しながらも、真幸は思った。よく似ているのは容姿、次に似ているのは声。それ以外は全然似ていない。
 でも、隆章と容姿が似ているだけ、少し複雑な気持ちになる。恋人の仕打ちを思い出すというより、恋愛感情を思い起こさせるからだ。
 ……たぶん、両方とも、おれの好みの顔なんだろうな。って、本当におれ最低だ。宏和さんに泊めた理由は絶対に言えない。同性が好きだってことも。
 メモを置き、目薬をつけて着替える。食事をする気もなくパイン味の飴を舐めて、再度バッグを開いた。
 娯楽グッズは持ってきていない。隆章と二人きりで一週間遊んで笑って、愛を深める予定だったのだ。ワクワクしながら荷物を詰めていた自分を思い出すと、本当に悲しくなった。
 手前に見えていたローションを無心で奥に仕舞い込む。
 ……これは、もう一生見たくない。
 隆章がかなり淡白な恋人だったこともあって、真幸が望むよりもセックスの回数は少なかった。前回抱き合ったのも沖縄旅行の話が持ち上がった冬のときだ。キスも抱擁も付き合った頃よりだいぶ減っていた。そのときに、女性との二股に感づくべきだったのかもしれない。
 ……好きなひとを、誰だって疑いたくもないよ。
 嫌なものを見て一気に凹む。でも、宏和がいるときにローションが覗いていなくてよかったと思う。薄ピンク色のパッケージは見る人が見ればすぐわかる。
 自分が男の性器をくわえて感じる性癖だということが、今はとても汚れているような気がした。崩れた心の修復には時間がかかる。真幸はバッグを前にして、一〇分ほど呆然と座り込んでいた。
 ……全部捨てたい。これならいっそ、想い出も何もかも。でも、無理だ。
 ここが自宅でないことが、自暴自棄になれない理由になった。
 本当はローションもコンドームも、目の前に見える観光ガイドブックも全部ゴミ箱に突っ込みたい。でも、それらが帰ってきた宏和に見られたら絶対に何か言われる。たとえ口にされなくても、頭にはインプットされるだろう。
 ……宏和さんはきっと、いいひとだと思う。でも、ゲイに寛容かどうかは別の話だ。
 今は愛を失った悲しみよりも、外面の良さを選ばなければならなかった。深呼吸を数度して気持ちをなんとか整える。そして、奥底に埋もれていた推理小説を一冊を取り出した。テレビを消して、九〇ページ目にあったブックマークを抜く。
 読書は真幸の大切な趣味のひとつだ。ソファにもたれて読みはじめると、あっという間に孤独感が解消された。本の中に没頭できれば、隆章のこともこれからのことも考えなくていい。懊悩から解放される小さな喜びを噛み締めながら読み進める。
 安寧はつかの間だった。
 作中で痴情のもつれがはじまった。いくつかの事件が交錯する物語だと、あらすじを先に読んで知っていた。でも、大人しそうにみえた登場人物の女が、元交際相手に復讐する役目を担っていたとは思わなかった。
 真幸は次第に、この女と話の展開に嫌悪感を覚えた。彼女が般若のような形相で男に「裏切り者」と叫び、主人公が慌てて止めに来るシーンで、たまらず文庫を閉じた。
 ひどく気が滅入った。ささやかに好きなことをしようとしても、邪魔が入って真幸に辛くあたる。
 もはや何をしてもすべて無駄のように感じて、のろのろとテレビを付け直した。ボリュームを上げて、聞き慣れた芸能人の声を聞く。聞いたことのある台詞が続いているな、と思い画面を見直せば、先週東京の自宅で見た番組が流れていた。
 そういえば宏和が言っていた。沖縄は民放のチャンネル数がとても少ないのだ、と。しかも、地元局の番組が優先されるから、本土で人気の番組はおさまりきれず深夜や午後の時間帯にも回される。さらに関東で放映されたものが二週間くらい経って、ようやく沖縄でも放映されることもざらだとか。
 ……宏和さんの言ってた通りだ。
 心の中で呟いても、真幸にとっては再放送と同じだ。展開はとうに知っているから面白味もない。
 ……おれ、本当に何やってんだろう。
 仲のよい同僚に、一週間も友達と旅行だなんて羨ましい、と言われたリゾート地。真幸も楽しみにしていた。隆章と二人きりの時間を、大事に大事に愛していこうと思っていた。
 今、虚しさばかりが埃のように積もっている。恋人の裏切りに傷つき、別れの言葉に苦しみ、初対面の男を部屋に泊めて、やさしさに安堵と警戒を持ちながら、……恋人と比較している。
 自分が本当にどうしようもない人間のように思えた。
 ……部屋にいるとダメだ。よくない。
 顔を出した絶望を押し込んで無理やり気力をつくる。
 猫背に座っていた身体を伸ばし、膝を起こして立ち上がった。カードキーと小銭入れをポケットに入れて部屋を出る。ドアノブにかけられたプレートを反対にして、廊下を歩けば家族連れとすれ違った。白熱灯の中でも、彼らの皮膚はよく焼けているのがわかる。奥のほうはファミリールームになっているのかもしれない。
 エレベーター内は一人でホッとした。ロビーに着くと目元を見られないよう俯き、足早にエントランスを抜けた。
 外は暑く騒がしかった。休日のせいか、ビーチで遊んでいる人が増えている。デジタルウォッチを見れば、四時過ぎ。時刻を気にせず遊べる時間帯だ。
 ……海は、見たくない。
 真幸はエメラルドグリーンのリーフから目を逸らした。あまりに綺麗で広大で、置き去りにされた気持ちが一気に溢れ出しそうになるからだ。水着になって大声で笑って遊ぶ連中も見たくなかった。楽しそうな人たちを見ると、自分の抱える絶望に耐えられなくなる。
 人気を避け、ホテルの横に続く小道を歩く。プールエリアへ続いているというプレートが見えて、すぐ道は開ける。整えられた開放的な敷地には、水色の濃い円を描いたプールが二つ。人はほとんどいないと思っていたが、案外ここでも水遊びをしている人々がいた。日焼け中の大人たちは備え付けのチェアを占拠している。幼い声がよく聞こえるのは、プールのひとつが極端に浅いからだ。幼児用なのだろう。
 南国にいながら海を選ばない人たちもいるのだと知って、真幸は深く息を吐いた。明るいプールサイドを急いで回避する。
 遊歩道は南の木々を生やしたグリーンガーデンに続いていた。管理された芝生に日光が鋭く反射する。暑くても眩しくても、散歩する人たちは何組もいた。手前からやってきた年配の夫婦とすれ違う。
 ホテルの敷地内は、どこに行っても人がいるようだった。しかも、皆連れ立って幸せそうにしている。
 意地になって人気のいないところを選び続けた。小道を外れ、芝生を黙々と踏み歩く。次第にまばらな地面が見えるようになって、あたりを見回した。
 ようやく人の気配が乏しいところに来た。ホテルが少し小さく感じる。子どもの声が遠くから響いてくる。視線を向けると、数十メートル先に駐車場があるようだ。しかし高くなった芝生の敷地とは段差で区切られていて気づかれない。ホテル裏は海も見えない。安堵とともに寂しさが寄り添った。
 ポツンと置き去りにされたベンチを見つける。小さな日陰に入りきらないペンキの剥げた大きな置物。手入れがされていないのは、ここまで来る客はいないと、ホテル側に思われているからだろう。
 ……このベンチ、おれみたいだ。
 近づきながら、真幸は思った。ここで倒れても誰にも見つけられないかもしれない。触れたベンチは熱が籠もっていた。
 強い日差しにかまわず座ると、石のように動けなくなった。体力よりも、心がひどく消耗している。
 何をしても壁にぶちあたって悲しい気分にさせられる。真幸は項垂れた。
 ……このまま、消えられたらいいのにな。
 そうしたら、戻ってきた宏和はどう思うのだろうか。所詮、出会ったばかりの他人だ。自分が女性であれば、少しは心配して探してくれるかもしれない。でも、真幸は男だ。大丈夫だと思われて、そのまま放っておかれるだろう。
 ……大丈夫じゃない。おれ、全然大丈夫じゃない。
 我慢していた涙が、ポロリと落ちた。ぐずぐずになっていた気持ちは、一粒で堰を崩す。自分だけ幸せから見捨てられてしまったのだ。ここではいくらでも泣いていい気がした。
 両手で顔をふさぎ、こぼれる気持ちから従順になった。頬を伝う涙で息苦しく、何度も咳き込む。肩がふるえ、悲しみがまた寄せてくる。頭が朦朧としてくると、記憶も遠のいていくような感覚に陥った。
 ……いっそ気を失ったら楽になれるかもしれない。
 そう思った瞬間、左腕に大きな水滴があたった。途端に、パラパラとテンポよく水が落ちてくる。顔を上げると太陽は消えていた。代わりに、グレイの雲が頭上を覆い被さっている。
 ……雨だ。
 雲は生き物のように空を滑り、あっという間に大雨を降らせはじめた。
 スコールだ。シャワーのように強い雨粒が全身に降りかかる。一瞬で真幸はずぶ濡れになった。
 火照っていた身体が冷めていく。涙は雨と同化して消えていく。視界が白く煙る程の強さは日焼けした肌にヒリヒリと刺さった。でも、物理的な痛みはささいなもののように感じられた。
 心は血まみれだった。豪雨で洗い流してほしくても、裂かれた傷のほうが大きすぎて血が止まらない。
 ……好きな人と一緒にいたかっただけなんだ。
 雨に打たれ、想いは溢れた。水と涙が混じって、鼻先からポタポタと雫が落ちる。
 ……穏やかで笑ってとりとめのない話をして、愚痴ってわかりあって、それだけでよかったんだ。大層な幸せなんて望んでない。同性しか好きになれなくても、隆章はいいって言ってくれた。おれのことを好きだって、言ってくれた。
 愛しい想いも記憶も、今は虚しい。隆章と話しあえたとしても、すでに彼からの愛は失われている。悲しくてもそれが現実だった。隆章との別れは、受け入れなければならない。
 ……受け入れるって、どうやればいいんだろう。わからない。わかりたくない。
 頭を抱えて現実から逃れようとする。しかし、雨は真幸を叩いて絶望に追い討ちをかける。抵抗できない心と身体。
 ……もう、何もかもぜんぶ、嫌になった。
「何やってんですか、こんなとこで」
 生きることへも諦めた言葉が、ひとつの声で突然すくい出された。真幸は驚いて顔を向けた。声が、宏和のものだったからだ。
 その通り、宏和が大きなビニール傘をかざしていた。
 幻視かと思ったが、まぎれもなく本人だ。親戚めぐりから戻ってきたらしい。
「ちょっと心配になって早く戻ってきたんだけど……真幸、風邪引くよ?」
 闇の底まで沈んでいた真幸の心に、彼の明るさが届く。眩しくて俯いた。
「引い、ても、いい」
 返した声が涙につかえてふるえてしまった。風邪なんて本当にどうだっていいことだ。でも、少しだけ安堵した自分に気づいた。
 知らない土地で、知っている人に目の前で心配されている。
「何言ってんだよ、大丈夫か」
 彼が腰をかがめて顔を覗き込む。体裁を取り繕える余裕なんてなかった。
「だ、いじょ、ぶじゃない」
 思いのまま、本心を吐き出した。
「もう、ぜ、んぶ、やだ、」
 事情を知らない宏和に喚いても意味がないのだと、わかっている。
 面倒なやつ、泣き虫野郎と思われているかもしれない。勝手に泣いてろと吐き捨ててどこかに行ってしまうかもしれない。気持ち悪い男に出会ったと嫌な気分になっているかもしれない。それなら、いっそ放って置かれたほうがいい。
「も、ほっと、いて、」
 泣きながら真幸が言葉を搾り出す。すぐ、宏和の声が重なった。
「ほっとくわけないだろ。人気のないところでこんなずぶ濡れになって、」
 宥めるというより叱咤するような言い方だった。
「真幸、とりあえず戻ろう? 俺が担いでもいいから」
 手を差し出される。気づけば、宏和も傘を閉じてずぶ濡れになっていた。
「かさ、」
「いいよ、邪魔だし、それどころじゃねえから今は。大丈夫、裏手からもうひとつのエレベーター使えば、ずぶ濡れでもバレずに部屋に戻れる。客に気づかれない方法知ってるから。ほら、真幸、一緒に戻ろう」
 子どもを諭すようなやさしい表情と言葉。献身的な彼の態度に心が動いた。
 激しかった雨が少しずつ穏やかなものに変わっていく。スコールはじきに止む。
 真幸はそっと、冷たくなった手を差し伸べた。触れた指を合図とばかりに、宏和が強く掴む。彼の手は温かかった。力強い、男の手をしていた。




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