* Scarlet Dark * |
『あのさ、俺がこう言うのもなんだけど、やめたほうがいいよ』 言いにくそうしながら口にした友人のセリフを、執拗に反芻する長い帰り道。 隼人は自転車を押しながら、点りはじめた電燈を見上げた。空は紅色に染まり夜が来る。世の中はとうとう師走だ。暖冬になるとの予報だが、冷たい風は日に日に身を冷やしていく。今も路を歩く人はいない。 一昨日から、隼人はわざと迂回して帰宅していた。知っている顔に会いたくないからだ。特にこの大学周辺は学生の住処が多く、近所に友人や先輩後輩が住んでいる。普段ならば夜通し遊べる楽しい環境なのだが、今はなるべく一人になりたい。近くにあるスーパーやコンビニエンスストアを利用するのもやめているくらいだ。そもそも食欲も出てこない。 ため息はわずかに白かった。あと少し行けば、きつい上り坂がはじまる。帰宅ルートの中では一番起伏のある路だ。自転車通学する隼人が今まで活用しようと思ったことがない路ではあったが、今は人気のなさがむしろよかった。 いっそのこと大学にも行きたくないくらい、と思えるほど気持ちは乱れている。単位のためにどうにか講義を出ているくらいで、早く冬期休暇になってくれないかと祈る毎日だ。十二月はイベントごとが多く、先刻も隼人の横で友人たちがクリスマスや忘年会の話を広げていた。隼人自身も、いくつかは参加が強制されている。でも、全部アルバイトのせいにして逃げたかった。 一昨日、友人の笠井から露骨に言われるとは思わなかった。 あの台詞に気を取られすぎて、昨日今日は一日空気のように生活していた。笠井と講義と休み時間が重ならなかったことは幸いだった。でも、本当に避けたい相手は笠井ではなく、笠井に指摘された共通の友達だ。 ……友達、なんてな。 冷えた空気を吸って自嘲する。今は彼の名を口にするのも罪のような気がする。胸が痛い。 順哉を今日は見なかった。でも、明日は会うのだろう。一昨日も笠井から指摘される前まで、彼と学内の食堂で一緒に食事をしていたのだ。二人だけのテーブル席で雑談に興じていた。彼といると、ぱっとしないメニューも美味しく感じられる。心が浮かれて楽しくなる。隼人には、順哉のことが好きで独占したいという気持ちがあった。 でも、同時に懊悩も蓄積していた。 彼と一緒にいられて嬉しいと思えば思うほど、この胸にある想いはまともではないと気づいて軋んでいた。順哉のそばで気持ちを上下させまいと努力しても、気づいてしまった想いは日に日に増していく。 隼人は下唇を噛んだ。きつい坂を上がりはじめて、遠くを見る。ここを越えると自宅がある。二年近く住んでいるアパートだ。 順哉は、隼人と同期生でよく家に遊びに来る男だ。華やかな雰囲気をもっているが、男女隔てなく接する気さくな性格の持ち主で、少し人見知りのある隼人にとって、彼ははじめから魅力的な存在だった。学部は一緒だが向かう専攻は違い、接点は少しずつ乏しくなっているが、それでも時間が合えばかならず二人は会っていた。 一緒にいると、特になにもしていなくても楽しいと感じて心が安らぐ。そういう感情になれる友人に出逢ったことがはじめてで、隼人はいつしか、順哉の隣にずっと居られたらいいのに、とまで想うようになっていた。 それが、恋愛感情だと気づいたのは今年の夏だ。 順哉のことが好きな女子と飲み会をするという話が他の友人から出たときに、隼人は自分の中に起きた異変に硬直した。大きな嫉妬。気づいたときに幸福は不幸になった。セッティングされた飲み会には怖くて行けず、隼人は抑えられない感情に苦しんだ。 しかも翌日、順哉がこう言ったのだ。 『楽しかったけど、俺は今んとこ女子と付き合いたい気分じゃねえから、実はカノいるんだって嘘ついちった。いねーのがバレそうになったら、もう隼人を女装させて俺のカノだっていうから、よろしく』 悪戯っぽい笑みをした彼に、隼人は冗談として聞き流せないままかたまった。すぐに『本気の顔すんよな』とフォローされ、『でも、今はカノつくるより隼人といたほうが楽しいんだよ』と微笑まれた。隼人は、言葉をつまらせて頷くことしかできなかった。順哉に言われたことが嬉しくてたまらなかった。同時に、この想いに大きな後ろめたさを感じた。 順哉にとって、自分はなんなんだろう? 一人になると、かならずこの問いを心の中でつぶやいた。順哉が男を恋愛対象にみられないのであれば、隼人はただの友人か親友でしかない。でも、順哉が女よりも自分を選んでくれたという事実に、隼人はしがみついていた。この想いさえ隠していれば、順哉のすぐ近くに居られて、彼を独占できる。誰よりも彼の心の近くに居られる。 まるで子どもみたいな考えだ。 そして、笠井はそんな隼人の気持ちに気づいてしまったのだ。 ……順哉のことは諦めたほうがいい、だって。 遠まわしに言ってきた笠井に、そんなのはとっくにわかってるんだ、と答えたい。でも、言われた瞬間は衝撃のあまりなにも言えなかった。図星をさしたことがわかった笠井は、さらに気まずそうな表情をみせた。 でも、彼が隼人の異変に嫌悪するよりも未来を心配してくれているのはよくわかる。悪い友人ではないのだ。黙り込んだ隼人を宥めるように『俺以外、それ気づいてないから』と重ねてくれたが、隼人に気持ちをもっと押し込めろ、早く想いを捨てろと静かに諭していた。笠井の理性的な言葉は、隼人の胸に強く響いた。 想いを皆に暴かれて苦しむのは、隼人自身だ。そして、順哉も悲しんで傷つくだろう。 笠井が言った台詞は、世間的にも自分の性格を鑑みても正しいと隼人も思っている。理性で食い止められるものならば止めたい。でも、気持ちが追いついてこない。 冷たくなった手と身体で自転車を押して、ようやく上り坂は終わった。路地に入ってすぐ左へ曲がる。あと三百メートルくらいでアパートが見える。 暗がりに広がる住宅と点在する畑を見ながら、いつまで続くんだろう、と思う。皆とは大学構内で顔をあわせる。なんともない素振りを徹しているが、隠しきれていないらしい。このまま順哉への想いを吹っ切ることができなければ、笠井の忠告どおり気づかれるのも時間の問題だ。 それに、順哉も鈍感な男ではない。 ……いっそ一年休学して遠方ボランティアに勤しむとか、そういうこと考えたほうがいいのかな。 考えれば考えるほど、逃げる方法しか浮かばない。明日への不安を抱えながら、隼人はアパートの自転車置き場に着いた。車輪を滑らせて、チェーンをかける。カチッという音より先に、人の声がした。 「やっと帰ってきたな」 後ろから圧し掛かってきた声に、身体がかたまった。夕暮れの彩度は影を写さない。 順哉がアパートにいるとは気がつかなかった。 「隼人」 振り返っちゃいけないと心に念じていれば、名前を呼ばれた。いつもの明るい声ではなく、静かな男の声だ。耐え切れず振り返る。 ジャケットのポケットに両手を突っ込んで立つ順哉と目があった。こげ茶色の髪。隼人より少し高い背。目じりがホッとしたように緩むのが見えた。 脳裏で危険を知らせるシグナルが鳴りはじめる。隼人は努めて自然に問いかけた。 「なんでいるんだよ。今日大学来てたか?」 「いや、でも、ここらへんに住んでる友達に用があったんだよ。ずっとそいつんちにいて、その帰り。おまえの家ちょうど通ったから」 そう言った順哉が片手を出して、腕にかけていた紙袋を持ち直す。人からもらった品だろう。友達は女かもしれないと、また心が塞ぐような憶測をする。順哉がもう一度口を開いた。 「いつもと反対方向から来たな。なんかあったっけ?」 詮索するような問いかけに、隼人は彼を見る。遠回りした意図を知られてはならなかった。 「う、うん。ちょっとオレも用があって」 「そっか」 苦し紛れの返答に、順哉はそれ以上追求しなかった。その代わりのように改めて口が動く。 「隼人んち、ちょっといれさせてよ。友達から土産もらったんだ、これ、食おうぜ」 何気なく会話をつなげてくる男に、隼人は息を止めた。密室で二人きりは無理だ。そう感情が瞬時に叫ぶ。 夏期休暇明けから二人でつるむことは格段に増えていたが、彼へ想いを自覚して、極力家に居れないようにしてきたのだ。幸い順哉は友人の多い男で泊まる場所には困らない。どうしても隼人の家へ留まることになれば、ここぞとばかりに隼人は他の友人も呼んでいた。その筆頭が笠井だった。 「家、今汚いから入ってもらいたくないんだけど」 「いまさらなに言ってんだよ。汚れてたら、俺も掃除手伝ってやるよ」 話は通じず、隼人は重くなる気持ちに耐えながら、「わかった」と答えた。部屋を見れば、隼人が嘘をついたとわかるだろう。 夕陽に背いてドアの鍵を取り出す。彼は、隣で隼人の動作を見つめている。 室内を見て順哉は言った。 「やっぱり汚れてねーじゃん。おまえの部屋」 少し責めるような言い草に聞こえて、胸が痛かった。 ……順哉の様子はかわらない。おかしいのは、自分だけだ。 「隼人さ」 ネガティヴなことしか考えられなくなっている隣で、現実へ引き戻す声が響いた。名前を呼ばれるだけで後ろめたくなる。酸欠になった魚が死に物狂いで息をしてるみたいだ。 「うん」 どろどろに混ざろうとする世界に目を逸らす。テーブルには、勝手に入れられた紅茶と土産と呼ばれる洋菓子の箱。紅茶の葉がこの家にあること自体、隼人は知らなかった。きっとずっと前に順哉が勝手に買ってきて置いていったのだろう。 社交的で人の家にすぐ馴染む彼は、いろんなタイプの友人に好かれていて、隼人の他にもいろんな部屋を攻略している。私物を置いている家があとどれくらいあるのだろう、と思うだけで妬いてしまう自分が嫌になる。 ……どんどん自分のことが醜く思える。 順哉を好きだと気づいていいことなんてひとつもない。でも、彼のことは嫌いになれなかった。友達だとも思えない。そばに居るのは嬉しい。でも、こうして二人きりで密室にいると不安のほうが強くなる。順哉に気持ちがバレてしまう恐怖と、好きになってしまったことへの罪悪感で声も出なくなる。 部屋に入ってから、隼人はほとんど順哉の顔を見ることなく俯いていた。笠井にはっきり警告されている。この忌まわしい想いを静めて掻き消してしまうまで、順哉と一緒に居てはいけないのだ。 本当は順哉といつもどおり笑いあいたいし、わだかまりなく接したい。そうした感情に戻れるまで、そっとしてほしい。 液晶テレビのリモコンをいじる順哉は、面白くないニュースで画面を固定して音を消した。 「おまえさ、たまにそういう顔、見せるよな」 彼のぼやくような声が部屋に響く。その言い方は不穏で、隼人は顔を上げた。 「すげー迷惑そうな顔してんのな。入れたくなきゃ、入れなきゃよかっただろ」 居た堪れないという隼人の表情を、順哉は悪い方向でとらえているようだ。言葉をつくらなければ、事態がおかしくなりそうな雰囲気だ。 「迷惑じゃない、んだけど」 とっさに出てきた返した言葉とともに、振り返った順哉と目があう。彼は、なぜかとても不満そうだ。 「じゃ、なんなの。締切やばいレポートでもあんの。ないだろ」 ……言えるはずがないだろ、順哉。 怖くなった。気づかれることも辛いが、否定されることのほうが何十倍も辛い。隼人は眉を寄せた。これ以上は無理だ。 「ごめん。今日はやっぱり都合が悪い。帰ってほしい」 保身のために頼んだ言葉を、順哉はにらんだ。彼が怒った表情をすることは少ない。前に彼が怒りを見せたのは、隼人が理不尽な対応をする教授のせいで一講義の単位を落としかけたときだ。 「なんで、そうなんだよ」 順哉の声の強さに、隼人は言葉選びを間違えたことを悟った。 「俺、なんかしたか? ちゃんと言えよ」 きつい口調に、順哉がなにを考えているのかわからない。隼人が順哉を避けたいと感じているのは気づいてしまったようだが、それくらいでイラつく理由になるだろうか。 「別になにもしてないって。そんな怒んなくても」 場を和ませようと、隼人は無理に微笑む。順哉の視線はより鋭くなった。 「最近、おまえなんかおかしいよ」 一昨日仲良く一緒に食事をして、わだかまりなどひとつもない顔をしていたはずの男の発言に、隼人はサッと目線を下げた。背筋が攣ったようにかたくなる。 ……オレがおかしいって、気づいてたのか。 しかも、最近、という単語が使われている。笠井も気づいたくらいだから、本人にもなにかしら気づかれるかもしれないと思っていたが、とうに隼人の異変を感じていたらしい。 黙る隼人を責めるように、順哉は畳み掛ける。 「楽しそうだと思ったら、俺が怖いみたいな顔突然しだすし、迷惑そうにもするだろ」 次になにを言うのだろう、と、隼人は怖くなった。 俺のこと好きなのか。気持ち悪い。なに考えてんだ。そんなふうに、隼人を否定するセリフが出てきたら、生きていけない。この場にいられない。 「迷惑じゃない。けど、今日は帰って」 大きな不安の中で、なんとか理性を保つ。この想いを自覚してまだ四ヶ月くらいしか経っていない。受け入れるのにも覚悟するのにも時間が足りず、想いを打ち消すにはもっと時間が必要で、だからこそ極力人と接しない努力をはじめていたのだ。 隼人の答えに、順哉は納得しない表情だ。サイドテーブルの手前と後ろで離れていた距離を彼が詰めはじめた。 「それしか言えないのか? 俺に、本当に言いたいこと、隠してんだろ」 真意を衝いているような言葉とともに、順哉が膝と手を動かしてやってくる。 「隠してない」 そう言いながら、隼人は慌てて身体をキッチンの方へ向ける。 「じゃあ、なんで逃げるんだよ」 「逃げてない」 「逃げてるだろ、今ッ!」 鋭い声とともに腕をつかまれる。這ってでも逃れようとする隼人の身体を、後ろから順哉が覆いかぶさるように抱きすくめた。 全身に毒がまわったように動けなくなる。順哉は、それをわかっているのか、さらにきつく隼人を抱きしめた。 順哉のにおいと熱で、おかしくなる。泣きたくなる。このぬくもりは焦がれていたものだ。恋しくてたまらなかったものだ。 「ごめん」 彼の声が身体に伝わる。なにに対して謝ったのか、考えたくもなかった。順哉の間近な息遣いが鮮やかに胸を打つ。ずっとこのままでいたい。でも、どうして抱きしめたのかわからない。 「順哉、帰れよ」 軽く混乱する頭で、ようやく出てきた言葉を吐く。すると、順哉の腕に微かな力が加えられた。 「いやだ」 その返答に胸は歓喜に震える。でも、絶対にうまくいかないのだ。隼人は目を閉じた。 ……順哉に期待しても、叶わない。オレとおんなじ想いであるはずがないんだ。 理性が信じられないほど冷静に働いて、現実を突きつける。抱きしめて引き留めたのはただの偶然なのだ。そう思わないと、傷ついたときに息ができなくなる。 「隼人、こっち見ろよ」 無理やり顔を向かせようとする順哉に、隼人はようやく抵抗を見せた。 「俺のこと、嫌なのか。俺のほうがおかしいのか?」 苦しむような声に、彼がなにを感じているのかわからない。隼人はただ自分を守りたくて順哉の腕をつかんで引き離す。二人の間にできた隙から感じた、順哉の射抜くような目に開いた瞳をあわせる。 「頼むよ。帰れ、」 隼人が言った瞬間に、彼のくちびるが重なった。驚いた身体をのけぞらせようとしても、塞いでくる口元はしつこく、順哉の手が隼人の首をつかんで固定する。息苦しくなって口を開くと、彼の舌がこじあけんばかりに入ってきた。 熱が絡む。隼人は力を失った。首をわずかに傾けると口づけは深くなり、順哉が首から手を離す。 「ぅ……ん、っ……ンっ」 とろけるようなキスをしながら、隼人の背に男の腕がまわる。同じように腕をまわした。キスが終わらなければいいと思った。もう戻れない。なにもかもが恋しくて怖い。 「っ、ン、」 あふれた唾液を飲み込む。順哉がくちびるを離すと、涙がにじんだ。 「そんな、怯えた顔、すんなよ」 順哉が困ったように、微笑んだ。 「笠井から聞いた。真に受けたんだろ、アイツの言ったこと」 その台詞で、彼が自分の想いを知っていたことに気づく。ビクッと全身が震えたのは、密着する順哉にもわかったことだろう。 「なんで、言われっぱなしなんだよ。俺は、おまえの聞き上手でなに言っても許してくれる感じがすげーと思う。皆それに甘えてる。俺もそうだよ。俺はしゃべりたいほうだから、隼人みたいなとこ逆に憧れるし、見習わないとなって思うこともあるんだ」 真面目な声を聞きながら、不謹慎にまた故意をする。真剣に自分のことを考えてくれることが嬉しい。 「でも、言わなきゃ伝わらないこともあるだろ。本当に言いたいことは俺にちゃんと言えよ。俺は隼人の言いたいこと、ちゃんと聞きたいんだよ」 そう言った彼の服を隼人はつかむ。 ……好きだ。順哉のこと、本当に好きなんだ。 ずっと言いたかった。想いを口にできれば、どれだけいいだろうと思っていた。 でも、順哉にたった今そう言われても、口にできない。代わりの言葉で答えた。 「言えるわけ、ない。こんなの、言えるか」 だって、こんな想いまともじゃない。実るはずがない。キスしてしまった今も、そう思いながら心が震えている。 高くなった体温だけが、順哉に本当の気持ちを伝えている。彼が、抱いている隼人の身体をもう一度強く寄せた。 「そうだよな。ごめん。俺も、ずっと言えるわけねーって思ってたのにな」 もう一度、軽く謝られる。隼人は予感させる言葉に眉を下げた。 「好きなんだよ、隼人のこと」 順哉が偽りのない想いを伝える。込み上げるものを止めようと息を止めても、溜まっていた涙が落ちた。 「俺、言ったんだから隼人も言えよ。言ってくれないと、俺も、不安なんだよ」 続けられた声で、恋をする不安を彼もまた負っていると気づく。手を取り合って歩いてゆく日々の後ろには、二人を蝕む時もあるだろう。ただでは幸せになれない路だ。 「順哉」 それをすべて受け止めて、隼人は彼の名を呼んだ。 「好きだよ」 今までの想いを込めた告白に、順哉に安心したように微笑む。それだけで救われたような気持ちになった。くちびるがふたたび重なり、隼人はまぶたを伏せた。 そして、順哉と一緒にいられるなら、なんだってできる、と思った。
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